テーマ別演習① 入試数学の掌握 総論編

感想など。ネット上では余りしっかりしたレビューが見当たらなかったので。
(水野の数学参考書レビューというblogにも記事があるのだけど,正直ちゃんと読んでるのか疑問です。まったくアテにならない。)
2巻の各論編もやったんですが,2巻は1巻の延長みたいなものなので,1巻が気に入れば買うべきでしょう。
通貨領域の解法は凄くよくまとまっていて特に良いです。ここだけ拾い読みするのもアリです。

メモ帳に何を書いてるんだ,という話ですが,内容に比べてネット上で評価されてなさすぎると感じたのでしっかりしたレビューを書こうかなと。
少しでも知名度向上に役立てれば,と思います。(エール出版ということで敬遠されている気がします)
個人的にもっと評価されるべき本と思っています。
ただし,受験生目線であり,僕は予備校教師でもなんでもないことに注意して下さい。

テーマ別演習① 入試数学の掌握 総論編
テーマ別演習② 入試数学の掌握 各論錬磨編


1:誰を対象としているか
 表紙には「理Ⅲ,京医,阪医合格レベルに…」と記載されていますが,正確に言えば,
「理Ⅲ,京医,阪医で必要とされる数学の点数を,調子が悪くとも取れるようにする為の本」
と考えるべきでしょう。
 つまり,医学部志望でなくとも,数学を得点源にしたいと思っている受験生ならば.読んでおきたい本です。数Ⅲ・Cも含まれてますが,文系の方でも読める部分はありますので,文理は問わない内容と思います。(文系でこのレベルまでは必要ないとは思いますが)
 注意しておきたいのは,この本は「東大・京大・阪大・京都府立医大」を受ける人を対象に書かれているという点です。
他の大学を受ける人にも役に立つ内容とは思いますが,単科医大などを受ける人は,どちらかといえばこの本よりもハイ理や大数系の本を優先させたほうがいいかもしれません。
(それらの大学は,どちらかというと大学内容や有名問題を知っているか?という出題をしているように思うので)

 この本が書かれた理由の1つは,
「3大学(東大・京大・阪大)の入試過去問50ヵ年(聖文新社)を読んでから,入試数学に対する考えがガラリと変わり,今まで使っていた教材を,より3大学入試に適したものに作り直そうと思ったから。」
だそうです。つまり,東大京大阪大を志望としている受験生には,最適の教材といえると思います。
 ただし,この本の「はじめに」にも書いてあることですが,典型問題を解けるようになっていない段階で手を出しても,消化不良で終わると思います。なぜなら,この本は「三大学で差が付くであろう,やや難しい問題にどうアプローチしていくか?」というコンセプトで書かれている,つまり「定石を知る」本ではなく,
「定石をどう選択し,運用していくか?」を身に付けるための本であるからです。
少なくとも,河合の全国統一模試レベルの問題であれば時間をかければ解ける,つまり大学への数学の新スタンダード演習や,一対一レベルの定石は身に着いた状態までもっていった状態でないと読みこなせないと思います。 
「レベルが高すぎる,こんな本不要だ」と思われるかもしれませんが,数学を武器にするレベルまでもっていくには,そのレベルまでもっていくのは当然と思います。

2:掲載されている問題のレベルはどの程度か
 1でも少し触れましたが,「三大学で差が付くであろう,やや難しい問題」が中心です。
難問も少し含まれます。ただし,どれも演習価値のある難問で,悪戯な難問はありません。
(ネット上で難問が多いと書かれてますが,大数よりはよっぽど簡単です)
「大学への数学」の難易度評価でいえば,BとDが少しだけ含まれて,基本的にはCが中心,という感じです。
つまり,C問題をどう解いていくかを考えるための本と考えてよいでしょう。
最近の東大は,C問題が中心になってきていますし,京大も今年に限ればそうでしたので,このレベルを解けるようになることは非常に重要です。
出典大学は,東大・京大・阪大が多く,そこそこ他の大学の問題も含まれているという感じです。

3:どのような内容か
 この本が書かれるに至った理由は,1に書いたように
「3大学(東大・京大・阪大)の入試過去問50ヵ年(聖文新社)を読んでから,入試数学に対する考えがガラリと変わり,今まで使っていた教材を作り直そうと思ったから。」
と近藤先生はとあるブログで述べていたのですが(最後にURLを添付します),もう2つ大きな理由が「はじめに」に書かれています。それは,

①難関大学の入試では「三角関数・数列・確率…」といった分野分け(よく,縦割りと呼ばれます)よりも,「重要なテーマ(全称命題の扱いなど)」(こちらは横割りと呼ばれます)が聞かれているのに,市販の参考書では文部科学省の定めた安直なテーマ割りでしか問題が扱われておらず,難関大学で問われるようなテーマで分類されたような問題集が存在しない。

②大半の問題集の,「指針」の部分には「それを言ってしまったらもう答え」というような結論めいたものしか書かれておらず,どうしてその方針を選ぶべきであるのかや,他の方針では何故ダメなのかが書かれていない。

ということです。
従って,この本の内容は,こういったことを踏まえた(既存の問題集を改善した)ような構成になっています。

「はじめに」には,
「入試数学がもつ本来のテーマ別に,なぜその解法を選ぶのか解答の一行目までの考察を大切にしつつ,3大学の格調高い問題を中心に,一度過去問演習をしてしまった浪人生にも意味が有るように本を執筆しています。」
と書かれています。

テーマについては,
1巻では,大きくわけて2つのテーマが扱われており,それは
「全称命題の扱い」と「存在命題の扱い」であり,
これらに関する問題を取り上げ,どうアプローチしていけばよいか,が書かれています。

(全称命題:「任意の○○に対し,△△となる」という命題
存在命題:「○○が少なくとも1つ存在する」,「ある△△に対し,□□が成り立つ」,「うまく選べば××となる」 という命題(本来は特称命題と呼ばれるらしい))

これだけではいまいちピンとこないと思いますが,それは手にとって本を見てもらえばわかると思います。

4:既存の「横割り本」と比べて,本書はどこが優れているか。
近藤先生は,①で「横割り本が存在していない」とおっしゃっていますが,一応形式的には「横割り本」となっているものもいくつか存在します。たとえば,私が知っている限りでは

・難関大突破数学の底力―Top Grade
・難関大入試数学・解決へのアプローチ
・解法の突破口

が挙げられます。
が,これらの本には欠点があり,
「底力」は横割り本にしてはレベルが低い(わざわざ解説するまでもない問題が多い),
「解決のアプローチ」は余りにもレベルが高すぎる(ほぼDクラスの難問ばかり)上に,きちんとした入試用の解答が書かれていないので,受験向けとは言い難い。(読み物としては完成度は高いですが)
「解法の突破口」はこの中では一番良書に思えますし,横割り本としては完成度は高いと思います。
しかし,この本は「掌握」以上に生徒に要求しているレベルが高く,自分のモノにできる可能性が低いことと,1つの問題に対し,その解法を紹介したいがために1つの解法しか書かれておらず,「定石を選択する」という力は得られないという欠点があります。
また,大数特有の,「これはそれ以降入試で目にかかることは無いだろう」という問題が含まれていることも欠点といえると思います。

しかし,「掌握」はそういった欠点はありません。
解説は大数のようにあっさりしていてわかりづらい,ということもないですし,難易度も適当なレベルに抑えられているので,取り組みやすいです。(それでもレベルは高いですが,流石に「突破口」は難しすぎる)

また,「掌握」が優れているといえることとして,
「大数のように,入試では余り見かけないような問題を取り扱っておらず,効率的」
ということと
「1つの問題に対して,"ごく平凡な発想から得られる解法"を模範解としている」
こと(一部有用性を考えて,そうでない解法を採用しているものもあります),
また
「<鉄則>という,ある問題に対峙したときの取り組み方をまとめたものを記載し,それからどう問題に取り組んでいくかまでも詳しく書かれている」
ということが挙げられます。
個人的にですが,<鉄則>は入試問題に取り組む上で,非常に役に立つと感じました。
(書いて有ることは当たり前ではあったのですが,それを「意識的」に行うのと,無意識に漠然と行うのでは,安定感が全く違います。意識的に行えるようにするのが非常に大切だと考えています。)

これらを踏まえると,「掌握」は類書の無い,優れた本といえると思います。

5:この本はどう利用していけばよいか,この本の後何をすればよいか。
「本書の利用法」というページがありますので,そこを読めば利用法は十分わかると思います。
(この本を終えた後何をすればよいかも書いてあります。)
そこにも書かれていることですが,この本は定石を学ぶ本ではないので,自力で考えてから解説を読まないと,全く意味がありません。近藤先生も,blogで
「それに、僕の本には致命的な弱点があって(笑)、僕が問題を懇切丁寧に説明している分、問題をガチでしっかり考えないままに解説を読んでしまって、分かった気になったつもりで結局身についてなくて、入試本番でコケるって状況がありうることかな。」
と述べています。
(例外的に1-2,2-1はいきなり解説を読んでいいと思います。1-2は著者自身この解法を学んでほしいという意味で問題を選んでいて,2-1は知らないとどうしようもない問題であるため)

6:この本のやる上での注意点
正直に言えば,この本のみをやっただけではそんなに成績は伸びないでしょう。
きちんと,この本を飲み込み,かつこの本で身につけたことを過去問演習でアウトプットしなければ,
この本でやったことは実戦の場でなかなか使えるようにならないと思います。(本書にも書いてあることですが)
それくらいレベルが高い、ということです。
なので,かける時間に対しての,得られる効果はあまり良いとはいえないでしょう。

それよりも,他の教科の底上げをしたほうが,点数の伸びはいいと思いますし,時間もかかりません。
そういった意味では,「理Ⅲ向け」といえるでしょう。
ただし,この本を経由するのとしないのでは,過去問演習で得られる効果が段違いですし,やっておくべきだとは僕は個人的には思いますが。(数学が好きだから、というのがデカいですが…。)


色々と長々と書いてきましたが,類書の無い,非常に良い本に思います。
使える層はかなり限られそうですが…。

(大数批判みたいなことを途中でしましたが,僕は大数が好きです。あくまで,入試にあまり役立たないと思っているだけで,嫌いとかそういうことではありません。(月刊とか,増刊号の一部は普通に役立ちますし。))

この本の著者の近藤先生が数学の勉強法に関する質問に答えているblog記事は,これです。(近藤先生が~といっていた,というのもここから引用しています。)
http://sakkonjidai.blog.fc2.com/blog-entry-41.html
買う人も,買わない人も,読んでおくべきでしょう。

また,どうやらエール出版だと絶版になる可能性もなくはないそうなので,できれば今のうちに買っておいたほうがいいかもしれません。7月頃3巻が出るとか。

 
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コメント

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京大過去問に関する記事を見させていただき非常に参考になりました。京大数学の典型的な問題として演習するのに、良い参考書はありますか?わたしは微積分基礎の極意、解放の探求の原則のみ、一対一対応数学三の部分はある程度おこなっています。

Re: タイトルなし

コメントありがとうございます。数Ⅲについてはその程度の下地で十二分だと思います。
京都大学の数学の問題は特徴的な問題が多いので,京大に絞るのであれば過去問演習が最優先です。
本来ならば掌握を勧めるところですが,京都大学の典型的なレベルを演習するのであれば,掌握よりも
「世界一わかりやすい京大の理系数学」http://www.amazon.co.jp/%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%B8%80%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84-%E4%BA%AC%E5%A4%A7%E3%81%AE%E7%90%86%E7%B3%BB%E6%95%B0%E5%AD%A6-%E5%90%88%E6%A0%BC%E8%AC%9B%E5%BA%A7-%E4%BA%BA%E6%B0%97%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E9%81%8E%E5%8E%BB%E5%95%8F%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E6%B1%A0%E8%B0%B7/dp/4806144665
という本が最適だと思います。問題が分野ごとにわけられているという欠点がありますが,掌握よりも基本的ですし,何より京都大学の過去問のみで構成されているという点と,掌握の「鉄則」や「考え方」にあたる部分(解答に至るまでのポイント,解答の構成の仕方など)があるという点で優れており,良い本だと思います。
これで標準的(といっても,難易度が高いものもあります)な演習を積み,掌握でやや難問にあたる,というのが理想なのではないでしょうか。

返事ありがとうございます。池谷先生の本ですね(*^^*)早速買いたいとおもいます(>_<)ありがとうございます
プロフィール

yks

Author:yks
受験生の頃に書いた
京大数学の考察・受験数学の解説・数学の勉強法・参考書のレビュー
を残しています.メインは受験数学の解説です.少しでも受験生に役立てば幸いです.
(最新2つの記事がまとめ記事になっています)
今は管理人は大学生ですが,受験数学についてでしたら答えれますので,質問などあればコメントしていただければと思います.
これからは数学について適当に投稿していこうと考えています.
数式を気軽に投稿できるblogってないんですかね?


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